なぜAIは「知的パートナー」になりつつあるのか―AIにブレイクスルーをもたらした5つの進化


■ 「ChatGPTって、なんでこんなに賢いの?」

そう思った人は多いはずです。
AIが登場したばかりのころは、質問してもトンチンカンな答えが返ってくることがよくありました。
けれど今では、企画を一緒に考えたり、文章をまとめたり、時には相談相手にすらなってくれる。

どうしてAIは、ただの“機械”から、ここまで人間に近い存在になったのでしょうか。
その理由は、ここ10年ほどで起きた5つの進化にあります。


■ 第1段階:「言葉を理解する脳」ができた(2017)

AIはもともと、文章を「順番に」読んでいました。
一文字ずつ、最初から最後までたどる――まるで音読のように。

でもこのやり方だと、前の話をすぐ忘れてしまいます。
長い文を読むのが苦手だったのです。

そこに登場したのが「Transformer(トランスフォーマー)」という仕組み。
AIが文章全体を一度に見て、どの言葉が大事かを判断できるようになりました。
これが今のAIの“脳の形”です。


■ 第2段階:「学び方」が変わった(2018–2019)

次に、AIは「たくさんの本を読む」練習を始めました。
それがBERTやGPT-2というモデルの時代です。

これまでのAIは、問題ごとにイチから勉強していました。
でもこの時期から、あらかじめ大量の文章を読んで「言葉の感覚」を身につけておくようになったのです。

人間でいえば、「義務教育を終えた」ような状態。
そこから先は、少し教えるだけでいろんな仕事ができるようになりました。


■ 第3段階:「大きくすれば賢くなる」と気づいた(2020)

次に起きたのが“スケーリング則”の発見です。
簡単に言えば、AIは大きくすればするほど頭が良くなる

もちろん限度はありますが、これは科学的にも確かめられた関係式でした。
こうして「じゃあもっと巨大なAIをつくろう!」という競争が始まり、
1750億のパラメータ(脳の神経のような単位)を持つGPT-3が登場します。

そして、誰も予想していなかったことが起きました。
AIが自分で“考えたような答え”を出すようになったのです。


■ 第4段階:「人間の教え方」を学んだ(2022)

ここで初めて、AIは“人間らしさ”を手に入れます。
それが「RLHF」という仕組みです。

これは、人間がAIの答えを評価して「こっちの方がいい」と選ぶことで、
AIが“好ましい言い方”を学ぶという方法。

その結果、説明が上手くなり、雑談ができ、相手の意図をくみ取れるようになりました。
AIが初めて「会話の文脈」を理解した瞬間です。


■ 第5段階:「データの質」を見直した(2023〜)

これまでAIは、とにかく大量の情報を食べて成長してきました。
けれど、インターネットの情報にはゴミも多い。

そこで最近は「どんなデータを食べるか」が重要になっています。
信頼できる情報を厳選し、AIが自分で“良い教材”を作ることも始まりました。

量より質。
この方向転換が、AIをより現実的で役立つ存在に変えています。


■ そして今:AIは「知的パートナー」へ

こうして振り返ると、AIの進化はまるで人間の成長のようです。

AIの進化人間でいえば
Transformer脳ができた
事前学習学校で学んだ
スケーリング成長期でぐんと伸びた
RLHF社会性を学んだ
データ品質食事の栄養を整えた

だからこそ今、AIはただの道具ではなく、一緒に考える相手になっています。
思いつきを整理してくれたり、別の視点を提示してくれたり。
時に人間より冷静に、時に意外な発想で、対話を導いてくれます。


■ おわりに

「AIが人間の仕事を奪う」とよく言われますが、
本当の変化はもっと静かで、もっと身近なところにあります。

私たちはいま、AIと“競争”するのではなく、
一緒に考える時代の入り口に立っているのです。

――そしてこの記事も、人間とAIが書きました。

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